大阪大学大学院基礎工学研究科 大学院生の田畑裕さん(博士後期課程3年)および同附属太陽エネルギー化学研究センターの中西周次教授らの研究グループは、産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 環境生物機能開発研究グループの加藤創一郎上級主任研究員およびGreen Earth Institute株式会社の山本啓介上席研究員らとの共同研究により、化学合成した非天然糖を用いたバイオものづくりに世界で初めて成功しました。
農業で得られるトウモロコシなどのバイオマス糖を利用したバイオものづくりは、環境に優しい技術として注目されています。しかしこうした従来型のバイオマス糖は、燃料や化学製品の生産という膨大な需要に対してその供給量に限界があり、工業利用の拡大による食料との競合が起こる懸念がありました。
今回研究グループは、上述した課題の解決に向け、化学合成した非天然糖を原料とした革新的バイオものづくり技術の開発に取り組みました。その結果、モデル微生物としてコリネ型細菌を用い、合成した糖液を唯一の基質とした乳酸の発酵生産に成功しました。これは、化学合成した糖を原料としてバイオものづくりが行われた世界で初めての例です。この成果により、食料と競合しない持続可能な原料糖の調達が可能となり、バイオものづくり技術の一層の拡大が期待されます。
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本研究成果は、Wiley-VCH発行の国際学術雑誌「ChemBioChem」にオンライン掲載されました。
タイトル:“Microbial Biomanufacturing Using Chemically Synthesized Non-Natural Sugars as the Substrate”
著者名:Hiro Tabata, Hiroaki Nishijima, Yuki Yamada, Rika Miyake, Keisuke Yamamoto, Souichiro Kato, and Shuji Nakanishi
DOI: https://doi.org/10.1002/cbic.202300760