第5回ERATO共生進化機構先端セミナー
講師: 吉田 聡子 博士(奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授)
演題: 寄生植物の寄生メカニズム解明を目指して
日時: 2022年3月28日(月)16:00(JST)~(参加費無料・要事前登録)
- 講演会ポスターはこちらからダウンロードいただけます。
講演要旨: 寄生植物は宿主植物を認識し、宿主組織の中に侵入して維管束を連結することで、水や栄養分を獲得する植物である。全被子植物の中で寄生植物は約1%を占める4500種ほど存在し、少なくとも12回の独立した進化によって生じたと考えられている。中でも、ハマウツボ科には、多くの寄生植物が属しており、寄生しなくても生育できる条件的寄生植物から、宿主無しでは生活環を回すことができないが光合成能を保持している絶対半寄生植物、光合成能を失い完全に宿主に栄養源を頼っている絶対全寄生植物が含まれる。ハマウツボ科絶対寄生植物の一部はイネ科穀物や、野菜、花卉などの作物に寄生し収量にダメージをもたらすため、世界的な農業上の脅威となっているが、その寄生の分子メカニズムは未解明である。
私たちは、ハマウツボ科絶対半寄生植物ストライガと条件的寄生植物コシオガマを材料に、ゲノム解析、ケミカルバイオロジー、分子遺伝学、細胞生物学などのアプローチを用いて寄生植物の寄生の分子機構の解明に取り組んでいる。研究室内での生育が容易で自殖するコシオガマをモデル系として用いて、寄生に異常がおこる変異体のスクリーニングと野生型親株とのゲノム比較により、寄生遺伝子の同定を行った。また、寄生器官の3D再構築により、寄生植物と宿主植物の連結部を可視化したところ、宿主維管束に巻きつく寄生植物細胞の形態が明らかとなった。
本セミナーでは、最近の知見を織り交ぜて、寄生植物が宿主を認識し、侵入、維管束を連結する仕組みについて紹介する。
Reference:
- Masumoto, N., Suzuki, Y., Cui, S., Wakazaki, M., Sato, M., Kumaishi, K., Shibata, A., Furuta, K. M., Ichihashi, Y., Shirasu, K., Toyooka, K., Sato, Y., Yoshida, S. (2021) Three-dimensional reconstructions of haustoria in two parasitic plant species in the Orobanchaceae. Plant Physiol. 185, 1429–1442
- Cui, S., Kubota, T., Nishiyama, T., Ishida, J.K., Shigenobu, S., Shibata, T.F., Toyoda, A., Hasebe, M., Shirasu, K., Yoshida, S. (2020) Ethylene signaling mediates host invasion by parasitic plants. Science Advances, 6, eabc2385
関心ある方々の参加を歓迎いたします。
主催: ERATO深津共生進化機構プロジェクト
連絡先: 深津 武馬(生物プロセス研究部門首席研究員、t-fukatsu@aist.go.jp)