昆虫類における内部共生現象をターゲットにした生物間相互作用の理解

テーマ

自然界では、生物は周囲の物理的な環境はもちろんのこと、他のさまざまな生物とも密接なかかわりをもってくらしています。すなわち、個々の生物は生態系の一部を構成しているし、体内に存在する多様な生物群集を含めると、個々の生物がそれぞれに生態系を構築しているという見方もできるのです。

(左)ソラマメにたかるエンドウヒゲナガアブラムシ。(右)その体内では、高度な生物機能を有する細菌群が特殊な細胞中に共生している。ブフネラ(緑)はアブラムシの生存や繁殖に必須である。セラチア(赤)はアブラムシに高温耐性を賦与したり、ブフネラの生理機能を相補する能力をもつ。青は宿主アブラムシの細胞核。

非常に多くの生物が、恒常的もしくは半恒常的に他の生物(ほとんどの場合は微生物)を体内にすまわせています。このような現象を「内部共生」といい、これ以上にない空間的な近接性で成立する共生関係のため、きわめて高度な相互作用や依存関係がみられます。このような関係からは、しばしば新規な生物機能が創出されます。共生微生物と宿主生物がほとんど一体化して、あたかも1つの生物のような複合体を構築することも少なくありません。

我々は昆虫類におけるさまざまな内部共生現象を主要なターゲットに設定し、さらには関連した寄生、生殖操作、形態操作、社会性などの高度な生物間相互作用をともなう興味深い生物現象について、進化多様性から生態的相互作用、生理機能から分子機構にまで至る研究を多角的なアプローチからすすめています。

共生細菌スピロプラズマ(左)に感染したショウジョウバエ(右)は、驚くべきことに子孫がすべてメスになってしまう。この現象は、「雄殺し」とよばれ、母性遺伝する共生細菌による利己的な生殖操作である。
貯豆の害虫アズキゾウムシ(左)のX染色体上には共生細菌ボルバキア由来の大きなゲノム断片(右)が存在する。種間を越えた遺伝子水平移転が、生物の機能獲得や進化にどのような影響を与えてきたかには、まだ不明の点が多い。

我々の基本的スタンスは、高度な生物間相互作用をともなうおもしろい独自の生物現象について、分子レベルから生態レベル、進化レベルまで徹底的に解明し、理解しようというものです。