新規微生物単離手法の開発

加藤 創一郎 ウェブサイト

新規微生物の単離手法の開発

微生物は驚くほど多様な代謝系・物質生産能を有し、機能化合物生産・食品製造・廃棄物処理等の幅広い分野で利用されています。しかしこれまでに人類が単離培養に成功した微生物は、環境中の全微生物種のうちわずか1%に過ぎないと言われています。人類は微生物が持つ膨大な有用機能・遺伝子資源のほとんどを、利用どころか発見すらできていないのです。

私たちはそのような未知微生物の培養化を目指し、新規培養手法の開発を行っています。

進行中の研究課題

培地調整法の軽微な改善による難培養微生物の可培養化

私たちのグループは、一般的な寒天培地に含まれるリン酸と寒天を同時にオートクレーブ滅菌することで発生する活性酸素種が、多くの微生物種のコロニー形成を妨げることを見出しました(Tanaka et al., Appl Environ Microbiol 2014 80:7659-7666)。この知見をもとに、培地調整法の軽微な改善により酸化ストレスを軽減することで難培養微生物の培養化を試みています。

希薄なガス基質を利用する微生物の培養

大気中には極めて希薄ながら水素(~0.5 ppm)やメタン(~1.8 ppm)といった微生物のエネルギー源となりうるガスが含まれており、それらを利用する微生物の存在が示唆されています。私たちはそのようないわば「空気をたべる菌」の分離培養を試みています。

「遺伝子ドーピング」による難培養微生物の可培養化

難培養微生物の培養化にあたり、これまでは「実験室内での培養条件を自然環境に近づけること」が唯一の解決法でした。私たちはその逆転の発想となる、「分離対象とする未知微生物に特定機能を人為的に付与することで実験室内の培養環境に適応させることができないか」というアイディアをもとに、革新的な微生物分離培養技術の構築を目指しています。

関連する研究成果

原著論文

  • リン酸と寒天を分けて滅菌するというシンプルな手法改善で未培養の嫌気性細菌の分離培養を効率化
    *Kato S, Terashima M, Yama A, Sato M, Kitagawa W, Kawasaki K, Kamagata Y. Improved isolation of uncultured anaerobic bacteria using medium prepared with separate sterilization of agar and phosphate. Microbes Environ. (2020) 35:ME19060. [Pubmed]
  • リン酸と寒天を分けて滅菌するというシンプルな手法改善で生育が遅い未培養細菌の分離培養を効率化
    *Kato S, Yamagishi A, Daimon S, Kawasaki K, Tamaki H, Kitagawa W, Abe A, Tanaka M, Sone T, Asano K, Kamagata Y. Isolation of previously uncultured slow-growing microorganisms by using a simple modification in preparation of agar media. Appl. Environ. Microbiol. (2018) 84:e00807-18. [Pubmed]