物質循環型社会に貢献する有用物質生産システムの開発―微生物代謝のデザイン

テーマ

「ゲノム科学の成果を産業へ応用する」ための研究開発を進めています。糸状菌の二次代謝を主な対象として、①医薬リード化合物、②エネルギーとして利用可能な化合物を生産します。ゲノム情報を基に、必須遺伝子とその制御情報を効率よく解析し、代謝の改変をデザインして、それら有用物質を合理的に高生産するシステムを開発します。また、ゲノム情報に基づいて生物種を識別する方法の開発やその自動化をするとともに、その国際標準化を目指しています。

(1)環境低負荷を目指した有用物質生産技術の開発

生物の機能の中で「代謝とその制御」に着目し、産業への応用を目指します。2つの物質生産(医薬化学品のリード化合物とエネルギーに変換できる化合物)を、多様な原料から生産することを大きな目標としています。

糸状菌など真菌の物質生産は、酵母のエタノール、黒麹菌のクエン酸など、既に産業的に高価値なモノも多いですが、真菌は、①多様な原料を使える ②生産量が多い、という長所があり物質生産に必須の生物群です。人類の食経験も長く安全性が確立した麹菌を主対象として二次代謝の研究を確立してきましたが、さらに糸状菌を中心とした真菌が生産する多様な化合物の中から、環境低負荷につながる脂肪酸など炭化水素系化合物から適したものを選択し、それら有用化合物を効率的に生産するための技術をゲノム科学に基づいて開発します。

(2)生物情報科学の展開

生物の根幹となる2大情報(ゲノム情報と立体構造情報)を解析する方法を開発しつつ、産業に応用する基盤を構築しています。ライフ分野の実験科学(生化学・X線結晶構造解析)と情報科学(ゲノム解析・構造解析)の両方を並行して進めてきました。幅広い分野の経験を活かして、両者を橋渡しすることで新しい分野の開発につながることを目指しています。古細菌のゲノム解析と由来するタンパク質の解析から耐熱性に関わる要因を解析したのをはじめ、真菌など真核生物を対象とした解析に展開してきました。次世代型シークエンシング技術も積極的に取り入れ、H24年度の沖縄のプロジェクトで実用的に利用する方法を開発し、さらに基礎的な解析法の開発も進めています。