アルデヒド基反応性試薬(脱塩基部位の検出と2本鎖架橋化用リンカー)

テーマ

紫外線や放射線等の種々の環境因子によってDNAは損傷を受ける。代表的な遺伝子損傷の一つに、核酸の塩基部が糖より脱離した脱塩基部位(AP site)があり、その構造中にはアルデヒド基(-CHO)が含まれている。またアルデヒド基は損傷DNAのみではなく、RNAの末端や合成核酸中に発生させることも可能である。アルデヒド基は一般にアミノ基などの求核性基と反応するため、その反応は核酸の定量や化学修飾に利用されている。我々はアルデヒド基の広範な活用法に着目し、核酸中のアルデヒド基に対して高効率で反応する化学試薬の開発を行っている。

開発

これまでの開発から、アルデヒド基に反応するアミノオキシ基の近傍に芳香族基とグアニジノ基を導入した化合物は、塩基との疎水的相互作用と負電荷のリン酸ジエステル結合との静電的相互作用の相乗効果によって高い反応性を発揮することを明らかにした。この試薬を用いることによって、核酸中の損傷塩基の高感度検出が可能になると考えている。

また、分子内に2つのアミノオキシ基を有する化合物は、2本鎖を効率的に架橋する活性を有することも確認した。この架橋化2本鎖構造では、塩基対の代わりに化合物がへリックス内部に挿入された構造を有し、2本鎖を高度に安定化することが可能である。そこで、架橋化された2本鎖構造を、電極上における酵素反応の足場や、核酸の検出用プローブとしての利用を目指した研究を現在進めている。

  1. Kojima, N., Takebayashi, T., Mikami, A., Ohtsuka, E. and Komatsu, Y. Construction of highly reactive probes for abasic site detection by introduction of an aromatic and a guanidine residue into an aminooxy group. J. Am. Chem. Soc., 131,13208-13209(2009).
  2. Kojima, N. and Komatsu, Y. Hydroxylamine, Oxime and Hydroxamic Acid Derivatives of Nucleic Acids. The Chemistry of Hydroxylamines, Oximes and Hydroxamic Acids, .,Vol 2, 807-851, WILEY (2010).
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  4. Ichikawa, K., Kojima, N., Hirano, Y., Takebayashi, T., Kowata, K. and Komatsu, Y. Interstrand cross-link of DNA by covalently linking a pair of abasic sites. Chem. Commun., 48, 2143-2145 (2012).
  5. Mie, Y., Kowata, K., Kojima, N. and Komatsu, Y. Electrochemical properties of interstrand cross-linked DNA duplexes labeled with Nile blue. Langmuir, 28, 17211-17216 (2012)