公開セミナー「最長寿齧歯類ハダカデバネズミの抗老化・発がん耐性機構の探究」をオンライン開催(12月18日)

トピック
2023-11-27

【第30回ERATO共生進化機構先端セミナー】
講演:三浦 恭子 博士(熊本大学 大学院生命科学研究部 教授)
演題:最長寿齧歯類ハダカデバネズミの抗老化・発がん耐性機構の探究
日時:2023年12月18日(月)16:00~, Online Zoom Meeting
  ・講演会ポスターはこちらからダウンロードいただけます。
  ・参加希望者は以下より登録をお願い致します。参加に必要な情報をお知らせいたします。
   参加登録:https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=yP6nGC9lm0CDaSctnOgGIAZ0AUJReXxOnlfJYlsFCHFUNUg2MFhRUjhJVjFWSkhISURQMDNJVEhaRC4u

講演要旨: ハダカデバネズミ(Naked mole-rat、Heterocephalus glaber、デバ)は、アフリカの北東部に生息する最長寿齧歯類であり、哺乳類では極めて珍しい、昆虫のアリやハチのような分業制の真社会性をもつ。デバは、マウスと似た体サイズながら異例の長寿命(最大寿命37年)であり、老化耐性や発がん耐性をもつことが知られている。我々は2010年にデバの飼育・研究を開始し、発がん耐性、老化耐性、社会性など、デバ固有の様々な特徴に関する研究を進めてきた。例えば、世界に先駆けてデバiPS細胞を樹立し解析した結果、がん遺伝子ERASの機能喪失型変異とがん抑制遺伝子ARFの活性化により、種特異的な腫瘍化耐性を示すことを明らかにした (Miyawaki et al., Nat. Commun. 2016)。最近我々は、デバ個体において初となる発がん剤投与実験を行い、炎症応答の減弱を伴う強い化学発がん耐性を示すことを見出した。解析の結果、炎症誘導性細胞死ネクロプトーシスの誘導に必須なRIPK3およびMLKL遺伝子の機能喪失型変異が、本種の発がん耐性の一因であると考えられた (Oka et al., Commun.Biol. 2022)。さらに、デバは細胞老化誘導時に、本種特有の「セロトニン代謝スイッチ」を介して細胞死を活性化させる機構をもつことを解明した。本機構は、“Natural senolysis”として体内での老化細胞の蓄積を抑制することで、本種の抗老化や発がん耐性に寄与していると考えられる(Kawamura et al., EMBO J. 2023)。今後は、これまでに確立した研究基盤を活用して、デバがもつ耐性機構の解明をさらに推進する。また、デバ個体の遺伝子改変技術を開発するとともに、様々な分野の方との共同研究を展開し、デバを含めた長寿動物の理解を深めていきたい。これらの研究を進めることで、寿命制御や老化、発がんの生物学的理解と進化学的考察の深化、また、将来的に新たな観点からの抗老化・抗がん戦略の開発につながることが期待される。

 関心ある方々の参加を歓迎いたします。
主催:ERATO深津共生進化機構プロジェクト
連絡先:深津武馬(生物プロセス研究部門首席研究員, t-fukatsu@aist.go.jp)