シトクロムP450
シトクロムP450は様々な有機化合物への一原子酸素添加活性（モノオキシゲナーゼ活性）を示すヘム蛋白質群の総称です。P450の多くは真核生物に存在しますが、近年バクテリアの中でもとりわけ放線菌が多数のP450遺伝子を保持していることが明らかになりました。これら放線菌P450は、抗菌物質などの二次代謝産物の生合成、様々な外来因子の解毒分解に関わると推測されていますが、その生理的役割の詳細が明らかになった分子はほんの一部にすぎません。また真核生物のP450の多くが膜に会合しているのとは対照的に、バクテリアのP450は細胞質にある可溶性酵素として存在します。私たちは、有用な反応を触媒するP450の探索、その構造機能解析、高活性あるいは機能改変体の構築、さらにその利用法に関する研究を行っています。
産業用酵素・臨床診断用酵素
細菌由来の可溶性酵素の多くはすでに機能解析が為されており、それらに似た配列のホモログ酵素も同様の機能を持つと思われがちです。しかしながら実際は、配列が少し違うだけで予想もつかなかった基質特異性や化学反応を触媒する酵素が少なからず存在し、希少物質の生産や物質の検出系への応用が期待されます。
逆転写酵素
逆転写酵素は、RNAを鋳型にDNAを合成する逆転写反応を触媒する酵素で、ヒト免疫不全ウイルス（human immunodeficiency virus (HIV)）やB型肝炎ウイルス（Hepatitis B virus (HBV)）等のウイルスは、 増殖のためにこの逆転写酵素が重要な役割を担います。そのため、この逆転写酵素の働きを阻害する化合物は重要な抗ウイルス薬の候補であり、HIVやHBV感染症に対する有効な治療薬として、これまで多くの逆転写酵素阻害剤が研究開発されています。私 たちは逆転写酵素の立体構造を詳細に調べ、薬剤感受性や薬剤耐性が生じる仕組みを研究し、新たな薬剤開発開発に役立つ原子レベルでの構造情報の取得を試みています。